日記が残した災害や戦争に関連する記述は、個人がリアルタイムで歴史的出来事をどう見たかを知る貴重な資料だ。
今年も「終戦の月」がやってきた。戦争について一人称視点で見ることで、当時の人々の生活の息遣いと差し迫る不安、悲劇、苦悩などを感じ取ることができる。
戦争に関する日記書籍を通じて、日記が個人的記録であると同時に歴史的資料になりうること、後世の人が当時の人々の視点を共有できることを感じ取っていただけると幸いである。
<戦争関連日記1>
暗黒日記 清沢洌 岩波書店
東洋経済新報社の顧問であった知識人による著書。戦中から終戦直前に肺炎で亡くなるまでの日記となっている。戦時中にあっても諸外国の情報を仕入れ、冷静なまなざしで当時の社会を見据えている。戦時下で少しずつ、社会の緊張度合いが高まっていくのを感じられる。
昭和19年1月1日の日記
「どこの家でも朝飯の食前に向かっていうことは”来年も果たしてこうして食えるかどうか”ということだ」
<戦争関連日記2>
レーナの日記 エレーナ・ムーヒナ みすず書房
戦時下のソ連の大都市レニングラードで、16歳の少女が綴った日記。レニングラードは第二次世界大戦のなかで長期間の戦闘が行われた都市として知られ、ドイツ軍による包囲は872日間にわたり80万人以上が犠牲となった。特に食糧不足は深刻で、雑草やペット、衣類までも口にする地獄が克明に描かれている。
1942年3月13日
「主よ!いったいいつになったら終わるのでしょうか!」
<戦争関連日記3>
少女たちの戦争 中央公論新社
瀬戸内寂聴、黒柳徹子、橋田壽賀子、石牟礼道子、向田邦子といった著名女性たちが、つづったオムニバス形式の戦争体験記。指導者や出征兵士の側から語られがちな戦争について「少女」という弱い立場から描いている。当時多くの日本人がさまざまな悲劇を、少女の目線から追体験できる1冊になっている。